一期一会とは、則ち一生涯にただ一度会うことかも知れぬという心情で、
風路の前に主客端座いたします。
その時今生においてこれ限りかもしれぬ、人命というものは朝露の如きものである。
朝あって、夕べは計ることができない。
ここで会えばまた会うことは人間として必ずしも期することができない。
今生にこれを限りと思う気持ちになる。
そこで茶を点てると、人間はふざけた心、雑念というものをことごとく脱落して、
真心が表れる。
その真心を重んじたのが、あの一期一会の有名な精神であります。
こうなりますと、茶を飲むということは、物質的問題ではなくて、深遠な悟道の
問題となるわけであります。
こういう諦観が、日本の方では生活の中に限りなく含まってきております。
活眼活学 安岡正篤 P69より
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