2011年9月26日月曜日

一人貪戻なれば一国乱を作す ~安岡正篤の人物を造る~


「一家仁なれば、一国仁に興(おこ)る。一家譲(じょう)なれば、一国譲に興る。
一人(いちにん)貪戻(たんれい)なれば、一国乱を作(な)す。
其の機此(かく)の如し。
此れ一言(いちげん)事(こと)を鎹(やぶ)り、一人国を定むと謂う。」


一家仁、一国興仁、一家讓、一国興讓、一人貪戻、一国國作乱。其機如此。
此謂一言鎹事、一人定国。




国民の上に立つ政治家が、身を修め家を教えて、一家の内が仁なれば、
国民はその感化を受けて仁の道に振るい興る。


一家みな謙譲なれば、国民も感化されて謙譲の風が興る。


これに反して、もし上(かみ)一人が貪欲で背徳の行いをするときは、
国民もこれにならって乱を起こすようになる。


その根元は在上者の一心の微より起こるので、それを機という。
これを「一言、事を鎹(やぶ)り、一人、国を定む」という。


「機」について山田方谷は「機は喩へば鉄砲の引金のごとし。


こちらで、ちょっとさわれば、すぐに弾丸が飛び出す。


政事も同様にて、一国の本は身に在り、身の本は一念に在り。
一念の発する、すぐに向ふに響き著(あら)はれる。
その仕かけは、かやうなものである」と述べている。


「機」というものもやかましい問題で、まあ、いえば大事なツボ、勘所、ポイントである。
いくら民主主義の世の中になっても、やはり「一言事をやぶり、一人国を定む」ということは、
全体としていえるであろう。


科学でも同じこと、イギリスの有名な物理学者マックスウェルもその著書の中に書いておるが、
人間というものは自分の専門の畑にのみ没頭しておったら駄目である。


いつの間にか頭が機械的に因習的になって死んでくる。


たえず専門外に目を配って、それをたえず自分の専門の問題に培養にすることが必要である。


実際そうで、毎朝一定の時間に起きて、型の如く飯を食べ、新聞を見て、電車に乗って、
一定のコースを通って、一定の職場に出て、一定の人間に会って、
だいたい同じような話をして、また同じ仕事を裁いてというように繰り返しておったら、
人間は間もなく馬鹿になる。


人間の関係というものは複雑微妙で、何が関係あるのかわからない。


先日も感心したのであるが、ある細菌学者でバクテリアの研究を三十年もやって、
しょっちゅう糞便の研究をやってきた人がいる。


この人は人間の便を見れば、その人の腸のどこに傷があるとか、どういう食物が好きだとか、
どういう性格だとかが、だいたいわかるという。


人間の性格が、便になんの関係があるかと思うが、
そうではないので、「どの面下げて」ではなくて「どの便下げて」といわねばならない。


「大学」を研究するのに物理などなんの関係があるか、と思ったら大間違いである。


物理でも生理学でも天文学でも、文学でも大いに関係がある。


その意味で、私は畑違いの学者だとか、すぐれた人々の業績にたえず注意をしている。


とにかく科学者というものは、常に普遍妥当的な法則を研究するように思っているけれども、
マックスウェルは、「決してそういうものではない、科学者は特にそういうことを見逃しやすい。
シンギュラー・ポイント(特異点)というものを注意しなければならぬ」と言っている。


これは、例えば大戦争を起こす一発の銃弾がある。


サラエボの一発のごときは第一次大戦を惹起した。


大山火事の原因を調べてみると、なんでもない一片の煙草の吸殻であることがある。


また大きな喧嘩とか議会の乱闘なども、ちょっと口をすべらして、とんでもないことになる。


そういうちょっとしたことが機に乗じて、「其の機此(かく)の如し」、ある機に乗ずると
大きな結果を惹き起こす。


科学者もその特異点をおろそかにすると、大きな失敗をしたり、破綻を生じたりする。


だから、たえずこの特異点に注意しなければならない。


ところが指導的地位が高くなるというと、その人の特異点は非常に高くなる。


だから一言一行を慎まないと、とんでもない影響を及ぼす。


まさに「一人貪戻なれば一国乱を作す」。


(安岡正篤-「人物を創る」より)


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2011年9月25日日曜日

南アルプス 白峰三山縦走 ~その3~

南アルプス 白峰三山縦走 ~その2~からの続きです。

北岳山頂より中白根山を経て、間ノ岳を目指します。

途中、北岳山荘で小休止。

北岳山荘のテント場
月が綺麗

北岳山荘から見る間ノ岳

稜線上でようやくドコモの電波を捉えることができました。

エコエネチャージャ大活躍!

今回、ecoeneチャージャー(エコエネチャージャー)を本格導入しました。

パーティーのiPhone5回分、ドコモのWifiルーター1回分を充電してもまだ余る大容量
は頼もしい限りでした。

甲斐駒ケ岳と北岳、北岳山荘

まだまだ奥深い縦走路

仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳

7月に登った甲斐駒ケ岳、そこから見た仙丈ヶ岳がなんとも美しい。
登った山を他の山から見ることができるというのはなんとも味わい深いものですね。

あまりに天気が良く、振り返っては何度も見てしまってなかなかコースタイムが
あがりません。

中白根山を超えて、いよいよ間ノ岳山頂に立ちました。

間ノ岳から見る仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、中白根山、北岳

間ノ岳から見る農鳥岳

個人的にはこの間ノ岳から見る景色が一番好きでした。
農鳥小屋を超え、農鳥岳を目指します。

間ノ岳と農鳥小屋

農鳥岳まで来れば、南アルプス 白峰三山縦走もクライマックス。
左手にはず~っと富士山を眺めながら、雄大な3,000m峰の山道歩きは
感無量です。

農鳥岳に向かう稜線から見る富士山

塩見岳

この塩見岳、間ノ岳からの縦走ルートが気になります。
南アルプスは奥深い。

今度は塩見岳をつなげる縦走ルートを歩いてみたいものですね。

農鳥岳から見る間ノ岳と北岳

農鳥岳からは間ノ岳、北岳、塩見岳、富士山などを堪能。

今回の縦走は本当に天気に恵まれました。

大門沢下降地点から大門沢小屋まで1,300mを一気に降り、
2日目は大門沢小屋で宿泊。

3日目も天気は晴

翌日は奈良田温泉まで歩いて南アルプス 白峰三山縦走を無事終える
ことができました。

奈良田の里温泉でのんびり

1日目 広河原→白根御池小屋→草すべりコース→北岳肩の小屋(泊)

2日目 北岳肩の小屋→北岳山頂→北岳山荘→中白根山山頂→
     間ノ岳山頂→農鳥小屋→西農鳥岳→農鳥岳→
     大門沢下降地点(鐘の塔)→大門沢小屋(泊)

3日目 大門沢小屋→奈良田ゲート→奈良田温泉

総歩行距離 約22km
登り高低差 1700m(広河原→北岳山頂)
下り高低差 2300m(北岳山頂→奈良田温泉)

*2日目に大門沢小屋を目指す場合は、1日目は北岳山荘に泊まることをオススメ
 します。
  1日目に北岳肩の小屋で宿泊した場合は、2日目は農鳥小屋に泊まるほうがよい
 でしょう。




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南アルプス 白峰三山縦走 ~その2~

南アルプス 白峰三山縦走 ~その1~のつづきです。

北岳肩の小屋で見た天気予報通り、2日目は快晴に恵まれました。

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雨雲は前線と共に日本海に停滞

台風15号は沖縄に停滞。太平洋上にある16号が前線を日本海側へ
押し上げていたんですね。(ラッキー!)

初日は景色はまったく見ることはできませんでしたが、
2日目は最高の景色を堪能することができました。


ご来光と富士山

仙丈ヶ岳と甲斐駒ケ岳

朝日に焼ける北岳と肩の小屋

ご来光をあおぐテント場

最高の天気に恵まれ、いよいよ3,000m大縦走の始まりです。

朝食を済ませ、足早に北岳山頂を目指します。

肩の小屋さん、お世話になりました

小屋にデポしている人は、身軽な出で立ちで北岳山頂を目指していますが、
我々パーティーは本日は大門沢小屋まで到達するのが目標です。

しばらくして北岳山頂に到着!

北岳山頂 3,193m

北岳山頂から見る仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳

鳳凰三山とオベリスク

北岳から見る富士山

仙丈ヶ岳と北アルプス、槍ヶ岳遠望

日本第2位の標高だけあって、見渡す限り一面には絶景が広がります。
ここより高いところは富士山しかないという世界。

前日の天気とは一転して、雲ひとつない快晴に恵まれながら、
次の間ノ岳を目指し3000mの縦走路を進んで行きました。


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