2010年12月19日日曜日

戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり

孫子曰く、

百戰百勝、非善之善者也、不戰而屈人之兵、善之善者也」(謀攻篇)

百戦百勝は善の善なるものに非ず、戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり
とあります。

百回戦って百回勝ったとしても最善の策とはいえない、戦わずして屈服させることが、
最善の策というわけですね。

自分たちの意思と相手側の意思が相克せざるおえない時、状況を進展させる為の
戦略立案の基本的な考え方として大変納得できるものです。

意思の相克が起こったときには、それが個人対個人であろうが、組織対組織、
国家対国家であろうが、それぞれのレベルであっても、対応する際の根源的な
思想は、この「不戰而屈人之兵・・・」なのではないかと思っています。
(もっとも、「それでも・・・」という局面になる場合もあるわけですが、)

先日、軍事アナリストの小川和久氏の「日本の戦争力」という本を読みました。


孫子は戦争について、
兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。
兵者國之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也
としています。


「戦争は、国家存亡に関わる一大事ですから、指導者のその決断が国家
滅亡につながる可能性があることを、よく検討しなければなりません。」
ということです。


小川氏はこの本で、日本の戦争力を「Facts and Figures(事実とデータ)
に基づき解説しています。

特に、自衛隊は、「水泳だけが世界トップレベルで、あとはパッとしない
トライアスロン選手のようなアンバランスな存在」で、「そもそも他国を侵略
できる構造になっていない」としています。
(世界トップレベルは、海上自衛隊の対潜水艦戦能力と掃海能力のことで、
日本が四方を海で囲まれた海洋国家であればこそ必要な能力と言えるで
しょう。)

したがって、日本の自衛隊には他国に対してのパワープロジェクション能力
(戦力投射能力)はないとしています。

一方、「Facts and Figures(事実とデータ)」から見れば、日米安全保障条約
の元、日本が米軍のアジアにおけるパワープロジェクションプラットフォーム
になっているとしています。

また、時に日米同盟の片務性はありながらも、アメリカにとっての重要性の
観点を無視すべきではない、ともしています。

(特に政治家や官僚が)こういった事実を見逃しているのか、誤認しているのか、
そもそも知らないということなのかはわかりませんが、自らを存続させており、
かつ互恵関係にある戦略的な関係の重要性を踏まえておく必要があるという
ことなのでしょう。

同じことは企業間の提携・互恵関係にも通じるものがあるのではないでしょうか。

そういったことを活かすのも、やはりということになるのでしょうね。

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