2010年12月23日木曜日

トータル・シンキング

臨機応変に状況対応することの大切さに関して、
孫子では、九変にて次のように述べられています。


故に将、九変の利に通ずる者は、兵を用うることを知る。
将、九変の利に通ぜざる者は、地形を知るといえども、
地の利を得ること能わず。


兵を治めて九変の術を知らざる者は、五利を知るといえども、
人の用を得ること能わず。


この故に、智者の慮は必ず利害に雑う
利に雑えて務めは信なるべきなり。
害に雑えて患いは解くべきなり。




この故に、諸侯を屈するものは害をもってし、
諸侯を役するものは業をもってし、諸侯を趨らすものは利をもってす。


故に用兵の法は、その来たらざるを恃むことなく、われのもって待つあることを恃むなり。


その攻めざるを恃むことなく、わが攻むべからざる所あるを恃むなり。


故に将に五危あり。
必死は殺さるべきなり、
必生は虜にさるべきなり、
忿速は侮らるべきなり、
廉潔は辱めらるべきなり、
愛民は煩さるべきなり。


およそこの五つのものは将の過ちなり、用兵の災いなり。
軍を覆し将を殺すは必ず五危をもってす。


察せざるべからず。


九変とは臨機応変に対応することです。

孫子では、智者は利益の面と損失の面を考慮すると説かれています。

貪欲に利益のみを求めてはいけない場合もある、逆に損失を考慮して
おけば、利益の追求に対して禁欲的になるため、直面した状況に対して、
現実対応が可能である、ということですね。

希望的観測のみで一面を捉えて利益の追求をするのではなく、
総合的な状況判断に基づいて、利益と損失を考慮しながら臨機応変に
対応することが結果に結びつく、という考え方です。


直線的に利益を求めれば、状況からしっぺ返しを食らうことになりかねないと
孫子では警鐘を鳴らしています。


利益には損失の因が含まれており、損失には利益の因が含まれている
という総合的なものの見方、トータル・シンキングができれば目的の達成は
危うくない、ということなのでしょう。


禍福糾える縄の如し、司馬遷も同じようなことを行っています。

禍によりて福となす 成敗の転ずること 譬れば糾える纆のごとし
(司馬遷『史記』巻113 南越伝)




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